CATツールを使用した翻訳案件ではマッチ率などに応じてレートが設定されています。このため、支払対象のワード数は全ワード数ではなく、実質的な作業量として重み付けされ算出されたワード数が支払対象のワード数となります。TM とのマッチ率に応じたワード数は、発注者側が CAT ツールのアナライズ(解析)機能を使ってカウントしています。
このレートやアナライズ結果が適切であれば問題はありませんが、ちょっとしたミスにより、不適切なレートが設定されていたり、翻訳指示と異なるレートが設定されていることはよくあります。
実質的な作業負担が計算上の実質ワード数より大きいと、納期に間に合わない、対価が割に合わないといった問題が生じる可能性があります。
そのため、翻訳者は翻訳データを受け取ったときに、これらに問題がないか、最初にチェックする必要があります。
ここでは、よくあるアナライズデータのミスとチェックポイントを紹介します。
100% マッチの算定ミス
100% マッチは翻訳対象外になることがあり、その場合はレートが 0 に設定されているはずですが、そうなっていないことがあります。これなら単に作業が楽になるだけなのでラッキーですが(報告しましょう)、反対のケースもあります。
作業対象なのにレートが 0 になっている場合は、量によっては著しく作業負担が増えることもあるので、すぐに報告しましょう。
また、案件によっては、100% マッチの作業負担が異常に高いことがあります。不適切な訳語やスタイルの修正が多いとか、大量のタグを修正する必要があるとか、複数の 100% マッチを吟味しなければならないとか、さまざまなケースがあります。このようなケースも、きちんとした翻訳会社であれば最初からレートに反映しているものですが、発注側が問題に気づいておらず、作業時間が多くかかる場合はレートの見直しを交渉してみましょう。
繰り返しセグメントの算定ミス
1 つのプロジェクトを複数の翻訳者が同時に分担して作業する場合、本来、分割したデータごとにアナライズを行う必要がありますが、誤って一括でアナライズしたデータが使用されることがあります。その場合、繰り返しセグメントとしてカウントされている箇所が実は別の翻訳者の担当箇所の繰り返しであり、翻訳作業時には実質的に新規翻訳と同じになっていることがあります。
これも量によっては大きな影響があるので、繰り返しのセグメントが多い場合はカウントが適切か確認しましょう。なお、TM がオンラインで共有されている場合、このような箇所は後から作業した人がラクできることになります。しかし、先行翻訳が不適切であったり、自分で統一してきた訳語と異なっていたりして、逆に悩ましいこともあります。先行翻訳の不適切さが一見してわかりにくいことであれば、校閲段階で問題のある訳が採用されることがないよう、クエリで報告しましょう。
オンライン CAT ツールの算定ミス
オンラインで作業をする CAT ツールはいろいろと問題があることが多く、アナライズもしかりです。ファイルを開いてみて感じるワード数とアナライズデータ上のワード数が明らかに違うこともよくあるので、違和感を感じたらチェックして問い合わせましょう。