私が技術翻訳者になることを決意したとき、まず始めたのが、資格要件であった 900 以上の TOEIC スコアを獲得することです。
毎日数時間かけて努力した結果、TOEIC スコアを半年で 200 上げることに成功しました。
ここでは、英語中級者が上位スコアを獲得するために行った最短ルートの学習法についてご紹介したいと思います。
まずは TOEIC の特徴を知ること
TOEIC テストには、かなりのクセがあります。このクセを把握していないと、本来の実力を発揮することはできません。ところが、このクセを理解せずに TOEIC を受験している方は、結構いらっしゃいます。
逆に言うと、TOEIC のことをまだよく研究していない方は、このクセを把握するだけでスコアが簡単に上がります。
クセや解き方を知ると、リスニング試験では、回答の選択肢を早く絞ることができ、試験中に意識を集中すべきポイントが明確になります。
文法問題では、受験英語とは問われる内容が異なるため、慣れていないと考えすぎて間違えてしまうことが多々あります。しかし実はそれほど難しいことは問われていないため、そのコツを理解し、少し練習を積みさえすれば、満点を取ることも難しくありません。
これらのコツを把握するには、TOEIC を毎回受験している TOEIC 専門講師の参考書を読むのが一番です。
いくつかありますが、全般的な対策としては次の本がお勧めです。
また、文法問題でスコアを落としがちな方は、次の本をやっておくとよいでしょう。
本物のTOEICの特徴を知り、解き方を身に付ける
続いて取り組むべきことは、本物の TOEIC テストを何度か受けて、先ほど知識として身につけたテクニックを本番でも活かせるよう、練習を徹底することです。
しかし本物の TOEIC テストを何度も受けるのは時間も費用もかかるので、もったいないことです。それに、本物の試験では、復習することができません。
そのような場合、模試を受けてみようと思うかもしれませんが、一般に市販されている模試問題集などはお勧めできません。なぜなら、いくら TOEIC テストを研究した人が作成した模試とはいえ、必ず本番と異なるクセがあるからです。
少し高価にはなりますが、取り組むべきは、TOEIC の公式問題集です。
1 冊に本番と同等の L&R テスト 2 回分が収録されており、解答や解説も付属しています。本番までに残された時間に応じて、最低でも 2、3 冊は解いてみることをお勧めします。
初回は時間を計って本番同様に解き、時間配分をチェックしつつ、現在の実力スコアを把握します。
この公式問題集を解く際に是非やっておきたいのが、リスニングテストの徹底した復習です。
聞き取れなかった表現があったり、知らない単語があれば、すべて確実に聴きとって理解できるようにしておきます。
リスニングテストに使われる表現や単語は基本的なものが多く、テストに何度も繰り返し出現することが多いので、復習によって苦手を克服しておくことが非常に効率的なスコアアップのコツとなります。
反対に、リーディングテストには難しい単語が含まれていることもあり、公式問題集ではリスニングのように徹底的に復習する必要はありません(文法問題以外)。長文読解では、問題を解くためのカギになる単語をチェックするだけで十分でしょう。滅多に出ない単語に時間をかけるよりも、後述する方法で読解力を身に付け、頻出単語を重点的に学習するほうが効率的です。
ここまでやると、現時点での実力に見合ったスコアと、苦手なパート・得意なパートが自ずとわかるようになります。
そこからは、地道な努力の積み重ねによって実力を底上げしていくしかありません。
とはいえ、点を取りやすいはずなのに苦手なパートは、演習を繰り返せばすぐに伸びます。
リスニングが苦手な場合、リスニングはスコアを伸ばしやすいのでラッキーです。
問題演習だけの対策に限界を感じたら、リスニング力を向上させる練習も効果的です。私がリスニング力のアップに効果があったと感じたのは、シャドーイングです(ディクテーションも良いですが手間がかかります)。
こうして苦手をつぶし、リスニングで高得点が狙えるようになると、800 台までの到達は意外と早く感じられるかもしれません。
さらに実力を底上げする
ここまでは比較的容易ですが、問題はここからです。
900 台のスコアを目指すには、読解力・語彙力を含むリーディング力の総合的な底上げが必要で、これは一朝一夕にして上達できるものではありません。
リーディング対策として効果的なのは、TOEIC 頻出単語を文脈のなかで覚えることです。
このことを長年提唱し、実践的な教材を開発しているのが、Z会の『速読速聴・英単語』シリーズで有名な松本茂教授です(Eテレ「おとなの基礎英語」にも出演されていました)。
私の場合、大学受験のときにZ会の『速読英単語』にお世話になり、大きな実力アップを実感していたため、TOEIC 対策としても同シリーズの『速読速聴・英単語』に取り組みました。
この学習法やその効果は本で最初に書かれているので省略しますが、このシリーズは本当に効果的です。
幸いなことに、今では TOEIC 対策に特化した『速読速聴・英単語』が 2 種類出版されているので、これらは非常にお勧めです。音声もダウンロードできるため、シャドーイングの教材としても、ビジネス英語の練習用としても有用です。
すでに 700 以上の実力があり、簡単なパートで落とさない基礎力が身についている方は、次の上級編から始めても問題ありません。
好きな分野の洋書や映画、ニュースの多聴多読も悪くはありませんが、TOEIC 対策としては遠回りですし、日本語訳や重点ポイントがわかる教材を繰り返し読むほうがずっと効率的です。
これをやりこめば、TOEIC レベルの基礎力強化には十分でしょう。
ただ、上位の GLOBAL でも、対象は 800 台レベルです。
900 台を目指すには、他にも取り組んでおいたほうが確実です。
そこでお勧めなのが、次の定番書。スコア990 までの英単語が網羅されているので、知らない単語を中心に補っておくとよいでしょう。
※TOEIC 向けの単語集としては『金フレ』も定番ですが、中級レベル向けです。
TOEIC対策講座(アプリ)は役立つか?
最近では、オンラインで利用できるTOEIC対策講座が発展しており、気軽にできるスマホのアプリも多数あります。
スタディアプリと SANTA TOEIC
利用者が一番多いのは、リクルートの「スタディアプリ TOEIC L&R TEST対策コース」です。
よく考えられた教材で、多くの英語学習者が推薦しています。
しかし私は、TOEIC 900 点台を目指す方にはお勧めしません。
なぜなら、スタディアプリはライトなユーザーを対象にしているからです。
調査によると、TOEIC 受験者のうち 8 割以上は平均学習時間が 1 日 1 時間未満です。
- 英語学習を継続できない
- 短い時間で効率的に少しづつ学習したい
そんなビジネス・パーソンや学生を対象にしているため、始めたら継続して取り組むことができ、効率的にスコアアップできるという点では、スタディアプリは非常に優れた教材と思います。
上位コースであるパーソナルコーチプランでは、96% のユーザーが完走でき、3 カ月以内で平均 100 点以上 UP しているという、素晴らしい実績があります。
この記事で紹介したような TOEIC 対策学習をすき間時間に効率的にできるので、これと『公式問題集』さえやっておけば、確実なスコアUPが見込めることでしょう。
詳しくは >> 業界初・オンライン特化型コーチ スタディサプリENGLISH
ただ注意したいのが、上位向けのパーソナルコーチプランでも、対象が「スコア860点まで」であることです。
それ以上のスコアを目指す人には不十分ですし、自ら進んで勉強できる固い意志があり、机に向かってまとまった時間を確保できる人にとって、最適な学習法は別にあるでしょう。
AI で効率的な学習ができる SANTA TOEIC では、「20 時間で平均 124 点 UP」という数字が公表されています(SANTA TOEIC は日本でのユーザー数はスタディアプリに劣りますが、アジアで 125 万人以上が利用している人気アプリです)。20 時間というと、1 日 30 分でも 40 日間です。
これが事実ならスタディアプリが最も効率的とは言えないと思いますが、教材としては類似していて、SANTA TOEIC はログイン・トラブルなどが多くスムーズに継続して学習するという点で難があるので、総合的にはスタディアプリのほうが好感が持てます。
どちらにしても、800 点台くらいを目指している人にとっては非常に強力なツールであることは間違いありません。
800 点台がまだ見えない人にとっては、コスパを考えると、「スタディアプリ TOEIC L&R TEST対策コース」は有力な学習法です。
7 日間の無料お試し期間もあるので、気になる方はまず試してみてはいかがでしょうか。
アルクの TOEIC テスト対策講座
本気で 900 以上のスコアを目指したいが、独学では不安、という方にお勧めできる講座は私としては一択しかありません。
ハイレベルまでの英語教材に定評あるアルクの講座です。しっかり 900 点コースが用意されています。
こうした通信講座は費用もかかるので、自主的に勉強を続けられる人にはお勧めしません。
が、独学でどうしても伸び悩んでいる方や、お金をかけてコミットすることで自分を追い込むほうが伸びるタイプの性格の方は、検討してみる価値はあるかもしれません。
※公式問題集は 7 が最新です(2021年2月時点)。