AI で翻訳の仕事はどう変化するか?

翻訳の仕事

近年になってエーアイ、エーアイともてはやされるようになりましたが、コンピュータを利用した翻訳は、孫正義氏をはじめ(?)、かなり昔から行われています。機械翻訳を利用する翻訳案件も、翻訳業界にかかわり始めた 10 年前と比べてかなり増えていると感じます。

AI 時代、翻訳の仕事は増えるのか減るのか、翻訳者はどうなるのかについて、翻訳者として考えていることを綴ってみました。

機械翻訳の精度は向上しているが…

かつて、機械翻訳の精度はひどいもので、ほとんど使い物になりませんでした。機械翻訳を利用した訳文が事前に挿入されているからといって単価が割り引かれる翻訳案件があるのですが、スタイルも文法もめちゃくちゃで、修正するより最初から訳し直したほうが早いことがほとんどでした。

2018 年現在はどうかというと、あまり事情は変わりません。ただ、以前よりは賢くなっており、単純な文を高性能なツールで訳した翻訳案件では、全文を書き直すよりは多少効率がアップするような気もします。

それでも、ちょっと複雑で長い文になると、出力はやっぱり意味不明です。翻訳時の頭の中の作業を振り返ってみればわかるように、あいまいで、深く考えることが多い翻訳作業は、機械には困難です。人間が書いた文章は原文の誤りも多く、機械はそれらを柔軟に処理することもできません。

翻訳業界での利用は増えるか?

文章としての自然さや読みやすさ、広告文としてのセンスなどが問われる翻訳案件では、利用価値はほとんどありません。

つまり、翻訳の仕事が AI によって完全に置き換えられることは、今後もないでしょう。

しかしそれでも、翻訳業界では今後ますます利用が増えていくものと考えています。低品質でも低コストで大量の文をローカライズしたいというニーズが、世界中に転がっているからです。

機械翻訳の得意分野

たとえばコンピュータ プログラムなどは、日本語にするだけで比較的かんたんに市場を拡大することができます。専門的なドキュメントでは 1 語 1 訳で訳せる専門用語が多く、原文がわかりやすさに主眼が置かれているために文構造も比較的単純です。世の中には、厳密な正確性が要求されず、何となく意味が通じればよい程度のドキュメントも多数あります。説明書などは、多少読みにくくても、ないよりはマシです。このような分野では、機械翻訳で効率的にローカライズできることには大きな価値があります。

AI 時代に求められる翻訳者像

このような時代のなか、翻訳者の仕事はどう変化するのでしょうか。私は、翻訳者の仕事は 2 極化していくと思っています。この変化はすでに始まっていますが、従来どおりの翻訳手法による高レベルな翻訳者と、機械翻訳に特化した専門家に分かれるのです。

仕事はなくならない

それ以前の問題として、翻訳の仕事がなくなるのではと思っている方もいるかもしれませんが、それはないでしょう。いずれにせよ、高い専門性が要求されるからです。低品質で低単価の翻訳の仕事があるのは、クラウドソーシングが普及した現在も同じことです。専門知識を有し、経験を積んだ方であれば、食っていけないほど翻訳の単価が下がることはないと思っています。

ポストエディターの仕事とは

機械翻訳の専門家に求められるのは、一定以上の品質で大量の翻訳成果品を生み出すことです。この作業はポストエディットとも呼ばれ、どちらかというと翻訳後の校閲者(チェッカー)の仕事に近いものがあります。これを行うのは、従来の翻訳者にとって、かんたんなことではありません。原文を読解できるだけでなく、要求されるポイントを押さえ、細部に突っかかることなく効率的に処理する能力が必要だからです。割り切って作業を進める必要があり、翻訳に対するこだわりが強いと逆に厄介です。

私はどちらの仕事も受けていますが、機械翻訳の作業の割合は増えています。それが業界の動向なのか、私の適性なのかはわかりません。正直なところ、機械翻訳は当初「やりにくさ」と退屈さを感じて嫌でしたが、低品質で良いと開き直ると、通常の翻訳ほど責任を感じる必要がなく、気が楽でもあります。そういえば、機械翻訳の作業を打診されても、いつの間にか昔ほど嫌には感じない自分がいます。いいんだか、悪いんだか。。

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