ApSIC Xbench は、パソコンを使用した翻訳の効率をグッと改善できる非常に便利なソフトウェアです。近年は翻訳会社でもよく使われるようになっています。
痒い所に手が届く機能が満載なので、翻訳関係者で使ったことがない方は是非使ってみることをお勧めします。
ここでは、お勧めする理由を簡単に紹介したいと思います。
Xbench の機能
Xbench は、TRADOS のような翻訳作業を行うソフトではありません。翻訳作業で補助的に使用するソフトです。
その特長は次のとおりです。
複数の TM と用語集を横断的に検索できる
翻訳支援ツールであれば、通常、TM の検索(コンコーダンス)機能があるのは当然です。用語集ソフト(MultiTerm など)も多数あります。
しかし、用語集と TM は分かれており、それぞれ検索する必要があります。
Xbench がすごいのは、これらの TM や用語集を複数まとめて検索し、一覧表示できる点です。一回の操作で参考資料をまとめて調べることができ、訳語の揺れや訳し分けなどまで確認することができます。
参照ファイルごとに優先順位を設定することもできるので、訳語選択の迷いや間違いも格段に減ります。
多数の翻訳支援ツールに対応
Xbench は、主な翻訳支援ツールとの相性が抜群です。
用語集や TM には各社さまざまなファイル形式が存在していますが、Xbench は TMX だけでなく、TRADOS 関係の多数のファイル形式、TranslationWorkspace、Wordfast などのファイルにも対応しています。TM も用語集も作業ファイルも、すべてまとめてプロジェクトに追加できます。
そして、どのツールを使用しているときでも、調べたい語句をハイライトして [Ctrl]+[Alt]+[Insert] のショートカットキーを押すだけで Xbench をすばやく立ち上げて検索することができます。
自作の用語集を簡単に利用できる
使用可能なファイル形式には、「タブ区切りのテキスト ファイル」もあります。
このため、提供ファイルなどから自作の用語集や TM を作成して利用することが簡単にできます。対訳リストは Excel などでタグ区切りのテキスト ファイル形式として保存するだけで簡単に利用できるようになります。
用語集データには source と target の他にも追加情報があることがありますが、これも一緒に読み込んで表示させることまで可能です。
チェック機能がある
翻訳作業ファイルを読み込むと、納品物の最終確認を行うこともできます。長音の有無の不統一を調べたり、各種記号の全角半角のミスを確認したりと、使い方はいくらでも応用できます。
また、[QA] タブからは翻訳対象のセグメントに限定して一般的なエラーをチェックすることもできます。翻訳し忘れた箇所、原文と訳文での数値の不一致、訳文の不統一などを抽出し、レポートを作成してくれます。
修正したい点が見つかったら、Xbench から対象箇所を開くことまでできます。
欠点
翻訳支援ツールのコンコーダンス機能と比較すると、あいまい一致を調べることは得意ではありません。しかし、PowerSearch([Ctrl]+[P])機能で検索すれば、複数の用語が離れて出現している登録まで調べることもできます。
大文字小文字を区別するかどうか、単語全体が一致する場合のみを表示するかといった詳細条件を設定すれば、TM のコンコーダンス機能以上に利用目的に沿ったデータを見つけることも可能です。
フリーでも使える
Xbench は基本的には有料ソフトです。30 日の試用期間があり、年間 99 ユーロという、微妙な料金設定となっています。
ただし、機能が制限される旧バージョン(Xbench 2.9)はフリーウェアです。ApSIC Xbench のサイトから、現在もダウンロードできます。
実は、この無料版でも利用価値は十分すぎるほどあります。
この無料版は、起動時にアップグレードを促すダイアログが表示されたり、文字化けが発生したり(高機能テキストエディタで文字コードを指定すれば解決できます)といった問題もありますが、上記の機能は概ね利用できます。
導入を迷う場合は、まず無料版を使い倒すことから始めてみてはいかがでしょうか。
この Xbench の使い方について、日本語の情報は多くありませんが、勘のいい人であれば適当にいじってみればわかると思います(英語のヘルプ、ユーザーガイドもあります)。
需要があれば導入までの記事を作成しますので、お問い合わせください。