翻訳支援ツール(CAT ツール)はこれまでさまざまな製品を使用してきましたが、それぞれにメリット・デメリットがあります。今回は代表的な翻訳支援ツールについて、使い勝手や特徴などを紹介したいと思います。
そういえば、近年は Word プラグイン タイプの翻訳支援ツールを使用する案件を受けることがほとんどなくなりました。分野によるのでしょうが、そういう傾向があるようです。
SDL Trados Studio
業界の代表的な翻訳支援ツールです。有料で初期費用がかかり、バージョンアップにも都度お金がかかります。この点はフリーランス翻訳者にとって残念ですが、使い勝手については総合的に見て最高です。
特に、ダブルバイト文字の日本語への対応がしっかりしていることが地味に好印象です。
ただし、訳文をクリーンアップした際にセグメント間のスペースがどうなるのかの仕組みが複雑なので、その点はどうにかしてほしいと思っています。これは日本語にうまく対応するように熟慮された機能でもあるのですが、状況によっては適切な処理を考えるのが難しいことがあります。
Translation Workspace XLIFF Editor
作業領域が Trados Studio のような 2 列の表ではなくエディターのようになっており、ツールとしての設計思想は異なりますが、TRADOS に並んで使いやすいツールです。オンラインの TM でも反応が早いのがうれしいポイントです。
細かいことを言えば、半角スペースを表示する設定にしていても画面上の改行箇所では非表示になるのが少し残念なポイントです。
Idiom WorldServer Desktop Workbench
他のツールにないメリットとして、プロジェクト内の複数のファイルを同時に開いて作業できる点があります。ファイルごとのワード数が極端に少なく、作業ファイル数が膨大になるようなプロジェクトでは非常にありがたい機能です。Trados などで一つ一つファイルを開くのは時間がかかるので。
ただし、このツールには次の重大な欠陥があります。
・TM 内を検索しようとするとフリーズすることが多い
・全角スペースを入力すると訳文の離れた文字が消えるなどの誤動作が発生する
・デフォルトのフォントが見にくい(変更できます)
TM があまりに使いにくいので、別途 Xbench を併用する使い方が一般的です。
OmegaT
フリーソフトなのでインストールして試しに使ってみたことがありますが、仕事で使用する案件に出合ったことがない、という点が致命的です。最近のバージョンはどうかわかりませんが、機能的に若干使いにくい印象です。
ただ、基本的な操作は Trados などと同じなので、お金をかけずに翻訳支援ツールの使い方を覚えてみたい、という用途には適しています。なお、翻訳支援ツールの使い方を覚えるなら、使っている翻訳会社に勤務することが一番お勧めです。
各種オンライン CAT ツール
ブラウザでログインして使用するタイプの翻訳支援ツールは、近年増えてきている印象があります。しかし、これらは私からするとなるべく使用したくないツールばかりです。それは、作業効率が悪いからです。
Web サーバとの応答に時間がかかるため、どの操作をしても反応に微妙な間ができてしまうことが非常にストレスです。次のセグメントに移動する際の待ち時間など、他のツールでは気にならないことが気になります。
サーバに問題があると変更が反映されないことがあるだけでなく、変更が反映されたかどうかがわかりにくいのでエラーも発生しやすくなります。
細かい機能が欠けていることや、日本語(ダブルバイト文字)に関連するバグも多々あります。
以前はこれに加えて Web サーバの障害や急なメンテナンス突入がよくあったのですが、この点はだいぶマシにはなったと思います。